オミクロン株に感染しても自宅治療で十分ーーそう言われてもなかなか得心がいかない市民は数多い。新型コロナの防疫措置が適正化されてから、発熱外来を訪れる人は急増し、解熱剤や風邪薬等の備蓄がトレンドになった。さらには、ウイルスの毒性が地域によって異なり「北強軟弱」といった現象が現れたとするデマまで出回っている。
▶「北強南弱」のデマを一蹴
広東省の中山大学で15日、全国の大学を対象とした新型コロナの防疫イベントが開かれた。中国工程院院士の鐘南山氏が「新型コロナウイルスの動態とその対応」をテーマとするオンライン講義を実施、オミクロン変異株の特徴や毒性、個々の感染予防のあり方について語った。
鐘氏は講義のなかで、オミクロン変異株の毒性が地域によって異なり、「北強南弱」(北方地域で強く、南方地域で弱い)の様相を示しているとする認識が広がったことについて、これをデマだと一蹴した。北京や保定(河北省)など北部で流行しているBF.7(BA.5.2.1.7の略)ウイルスは、重慶などで広がったBA.5.2の変異株であり、全体として2つの系統のウイルスの間には際立った差が見られないとしている。
▶BF.7は潜伏期が短縮
さらに、BF.7変異株の出現で潜伏期が短くなっており、感染した翌日には症状の兆候を示す傾向がある。大部分の人に顕著な症状はなく、喉の痛み、頭痛、発熱といった症状を訴えるのは一部の人だとされる。
発熱を伴い、全身に痛みを覚えるのは患者にとって辛いことだ。しかし、医学面で重症または軽症の区分を行うこととは別次元の話だと鐘氏は語る。北京で昨今流布された「朝陽区の変異株が海淀区の変異株より毒性が強い」とした議論も全く根拠がなく、単に個々の反応を取り上げただけだと説明している。
▶「みんなで感染」はご法度
ただし、オミクロン株(BA.4/5、BF.7)の症状が軽く、大多数のケースで7〜10日の間に完治するといっても、「みなでコロナに罹患すれば怖くない」というスタンスは受け入れられない。中国は人口大国であることから、やはり短期的に集団感染が発生するのを防ぐのが何よりも重要だと鐘氏は説く。正常な社会秩序に影響を与え、新たな変異株の出現を招かないように注意を配る必要がありそうだ。
なお、鐘氏は、ワクチンのブースター接種を強く呼びかけていくことの重要性も指摘している。個人の防護としては、マスクの着用や定期的な手洗い、こまめな換気、ソーシャルディスタンス(1メートル以上の間隔)を保持する等、地道にルールを遵守していくことが求められる。医薬品のフェーズ3臨床試験を強く推進し、市場投入を加速させることにも鐘氏は期待を込めた。